追い込まない方が筋力は伸びる?低RPEトレーニングの考え

筋肥大では高RPEの方が1セットあたりの効果は大きいと考えられています。

しかしながら、筋力向上を目的とした場合はどうなるのでしょうか。

1RMを最大限に伸ばすためにはどうすればいいのか、ベースとなる得る考えについて紹介します。

筆者について

トレーニング、特にビッグ3が好きなパワーリフティング愛好家。マックスは、ベンチプレス135kg、スクワット215kg、デッドリフト255kg。筋肥大と筋力の最大化を目指して日々精進中。

要約

  • 高重量低レップはもちろん筋力向上への特異性が高いですが、それだけではボリュームを稼げません。
  • ボリュームを稼ぐために重量を下げ高レップにすると、高RPEではセット内での出力が疲労に伴い落ちてしまいます。
  • ボリュームのためのセットでも特異性を保つためには、低RPEで終えるのが良いのかもしれません。
  • 当然ながらこれは筋力のみの話であり、筋肥大のためにはRPEが10に近くなるほど効果があると考えられます。
  • 筋力向上を考えた場合でも、長期的には高RPEのトレーニングも含めた方が、筋肥大によるメリットが大きいかもしれません。

追い込まない方が筋力に効果的?

ここで言う「追い込まない」は、高重量を扱わないという意味ではありません。

正確に話を進めるために、特異性について少し説明します。

パワーリフティング(1RM筋力向上)における特異性とは、1レップで最大重量を扱うことです。

トレーニング適応で最も重要なのは特異性であり、1RMを向上させるためには1レップで高重量を扱うのが効果的と考えられるはずです。

しかしながら、1レップだけでトレーニングをする人はいません。(たまに超人がいるかもしれませんが)

それは、高重量1レップだけではトレーニング適応に必要なボリュームを稼げないからです。

一般的に、このボリュームを稼ぐために、重量を落としレップ数を増やしてセットを行います。

今回のトピックは、このボリュームを稼ぐセット(以降ボリュームワーク)において、「追い込まない」方が筋力向上に効果的なのではないかという話になります。

「追い込まない」についてもう少し具体的に説明すると、一般的に効果的とされるRPEよりも低いRPEでセットを終えることです。

数値的には、RPE6以下と考えていただければ大丈夫です。

※RPEについてご存知でない方は、RPEとは?トレーニングへのメリットや注意点を解説を読んでみてください。

低RPEボリュームワークに関する根拠

※詳細を知りたい方は、 Zac Robinson and Josh Pelland - Rethinking Proximity to Failure for Strength Gainsを読んでみてください。

なぜボリュームワークを低RPEで行う方が筋力に効果的だと考えられるのでしょうか。

それに関する論理的根拠や研究を確認してみましょう。

筋出力と挙上速度の関係

まず第一に前提となる考え(理論)的なところから入ります。

1RMと、ボリュームワークの最終レップはどちらも必然的に低速度になりますが、その質が異なります。

  • 1RM:最大出力のために必然的に遅くなる
  • ボリュームワークの最終レップ:セット内の疲労により遅くなる

この違いは、ボリュームワークの最終レップは1RMとは異なる性質であることを示しています。

ボリュームワークは重量を落とす以上、前提として筋出力が低下します。

この筋出力が低下した中で、セット内に疲労するとさらに筋出力は低下していきます。(2)

そのため、筋力向上という観点では、筋出力の高いセットの序盤の方が、特異性が高く効果的だと考えられるのです。

追い込みと疲労・筋ダメージの関係

上記の直接的なメリットだけではなく、低RPEでのトレーニングにより疲労の低下というメリットも考えられています。

追い込んだ場合、つまり高RPEの場合、筋ダメージが大きく回復に時間がかかることが分かっています。 (3)

週に2回以上同じ種目(もしくはバリエーション)を行う場合が多いと思いますが、当然ながら次のセッションでは疲労がない方がパフォーマンスも良いはずです。

そのため、疲労が少ない方が適切なテクニックで、出力も上げられると考えられます。

また、筋ダメージが残っている状態でトレーニングをすると、動作習得を抑えてしまう可能性も示されています。(4)

低RPEトレーニングに関連する研究

これらの考えをサポートするいくつかの研究を紹介します。

挙上速度と筋力向上の関係 (5)

  • 8週間、週2回スクワットのみを行う実験。強度は70%~85%。
  • セット内で挙上速度が一定値減少した段階で、セットを終了。0%、10%、20%、40%の4グループ。
  • 筋力は、ボリュームに違いがあるにも関わらず、全てのグループで同等に向上
  • 筋肥大は20%、40%グループの方が向上

トレーニングボリュームに差があるにも関わらず、どのグループでも筋力が同程度向上しています。

具体的なレップ数の結果は、以下の表をご覧ください。

Pareja-Blancoら、2020のレップ数結果
出典:Pareja-Blancoら、2020
※VL0が0%減速した時点で終了、VL40が40%減速した時点で終了したグループ。

1RMの70%の重量で比較すると、0%は1レップに対して、40%は7.6レップと7倍以上の差です。

そのため、筋肥大に関しては高ボリュームの方が良い結果となっています。

また、筋力に関しても、多少はボリュームがあった方が良い傾向にあるみたいです。

適度な挙上速度減少閾値(10%や20%)を適応させた方が筋力の向上率が高いことが確認されたものの...

出典:Pareja-Blancoら、2020

いずれにせよ、ここまでのボリューム差がありながらも同程度に筋力が向上するには興味深い発見です。

同等のボリュームにおけるRPEと筋力の関係性 (6)

  • 12週間、週4回のトレーニングを実施。(主に上半身と下半身を2回ずつ)
  • メイン種目を、4セット10レップでセット間休憩2分のグループと、8セット5レップでセット間休憩1分のグループに分割
  • 強度は1RMの65%~75%
  • 多セット低レップグループの方が筋力が向上
  • 筋肥大に関しては、グループ間で有意な差はなし

先ほどの研究ではボリュームに差がありますが、今回はボリュームが同じになるような設定です。

予測できる結果かもしれませんが、ボリュームが同じのため筋肥大に差はなく、筋力は低レップグループの方が向上しています。

Oliverら、2013の筋力結果
出典:Oliverら、2013
上がベンチプレス、下がスクワットの1RM向上率。TRDが4セット10レップで、ISRが8セット5レップグループです。

低レップグループのみが4週間目の時点で向上しているのも面白いですね。高レップ側は疲労でパフォーマンスが落ちているのではないかと予想できます。

両グループとも同じ強度でトレーニングしていたため、低レップが高強度でトレーニングしたことによる筋力向上ではありません。

また、一般的にセットを増やすとその分トレーニング時間も増えますが、セット間休憩を半分にしているため、トータルの時間には差異がありませんでした。

本研究に使用されたイントラセットの休憩時間(訳注:低レップグループのセット間休憩)は、合計トレーニング時間に影響しなかった。

出典:Oliverら、2013

低RPEボリュームワークを取り入れる方法

1RMを強くしたい人には非常に魅力的に見える「追い込まない」トレーニングですが、実際にはどのようにプログラムに取り入れればいいのでしょうか。

Data Driven Strengthチームの推奨方法を基に説明していきます。

まずトレーニングを構成する際に、以下の要素に分けて考えます。

  • 85%以上の高強度低レップのトップセット
  • 65~85%の低RPEボリュームワーク

高強度低レップセットについては前述した通り、1RM向上に出来る限り近い練習をするためです。

その後のボリュームワーク、いわゆる「バックオフセット」では従来よりも低RPEで行います。

どれくらい低RPEにすればいいのか

挙上速度と筋力向上の関係 で紹介した研究(5)では、速度が10~20%落ちる程度で切り上げるのが良さそうという結果でした。

それぞれの強度における、挙上速度減少閾値毎の平均レップ数を確認すると、以下のようになっています。

挙上速度減少閾値10%

強度レップ数
703.7±0.9
753.1±0.8
802.5±0.9
852.2±0.9

挙上速度減少閾値20%

強度レップ数
704.2±1.2
753.8±1.2
802.9±0.8
852.3±0.8

これを一般的な1RM計算方法から逆算すると、RPEとしては以下の通りになります。(挙上速度減少閾値20%をベースに、小数点以下を四捨五入)

強度RPE
702
754
805
856

最低だとRPE2、最高だとRPE6という結果です。

RPE2など極端に低い場合は実質正確なRPEを図るのが非常に難しいと思います。

そのため、RPE6以下を基準に考え、強度が下がるにつれRPEも下げるイメージがいいのではないでしょうか。

筋肥大を狙う場合

先ほど紹介した中で、高RPEの方がボリュームが高く、そのため筋肥大の結果も良かった研究がありました。

また、高RPEとボリュームを同等にした場合は筋肥大に差異がなかった研究もありました。

ということから、以下の2パターンがあるかと思います。

  • 一部の種目でRPEを高めてボリュームを稼ぐ
  • 低RPEでもその分セット数を増やしてボリュームを稼ぐ

現実的には、前者のRPEを高める方法が時間やジムの環境的に実施しやすい気がします。

多セットでもセット間休憩を短くすることでトレーニング時間に差がなかったという結果もありましたが、絶対重量が増えるにつれ時間が長くなるのではないかと思います。

低RPEボリュームワークに関する考察

個人的に、低RPEセットの方が筋力が向上するのはしっくりきます。(意図的にこの考えを取り入れていた訳ではないですが...)

経験上、トップセットを終えた後にRPE6-7くらいでバックオフを行っていた時の方が、スムーズに筋力が伸びています。

とはいえ、その前には高ボリュームのブロックを行っているので、単純に疲労が抜けてパフォーマンスが出てきただけかもしれません。

いずれにせよ、こういった低RPEトレーニングの考えを今後のトレーニングに取り入れてみたいなと思います。

冷静に考えると、既にこういった手法を取り入れているストレングストレーニー、コーチは少なくないはずです。

ロシアのパワーリフティングコーチであるボリス・シェイコが作るプログラムは、多セットで低レップな傾向にあると思います。

シェイコに限らず、「サブマキシマル」なプログラムを意識している場合は、程度に差があれども本コンセプトに近いでしょう。

導入する上で少し気になる点は、ボリュームの管理です。

やはり低レップで終えてしまう以上ボリュームが少なくなってしまうため、多セットにするか補助種目をちゃんと行うか考慮しないといけません。

単純に今まで通りのボリュームでRPEを低くするだけだと長期的には伸びなくなると思うので、注意してみてください。

この点については、パワーリフターはボディビルダーのようにトレーニングするべきを読めば理解が深まると思います。

今回も読んでいただきありがとうございました!

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参考文献

  1. Zac Robinson and Josh Pelland - Rethinking Proximity to Failure for Strength Gains - myojournal.com
  2. Nocella M, Colombini B, Benelli G, Cecchi G, Bagni MA, Bruton J. Force decline during fatigue is due to both a decrease in the force per individual cross-bridge and the number of cross-bridges. J Physiol. 2011;589(Pt 13):3371-3381. doi:10.1113/jphysiol.2011.209874
  3. Pareja-Blanco F, Rodríguez-Rosell D, Aagaard P, Sánchez-Medina L, Ribas-Serna J, Mora-Custodio R, Otero-Esquina C, Yáñez-García JM, González-Badillo JJ. Time Course of Recovery From Resistance Exercise With Different Set Configurations. J Strength Cond Res. 2020 Oct;34(10):2867-2876. doi: 10.1519/JSC.0000000000002756. PMID: 30036284.
  4. Leite CMF, Profeta VLDS, Chaves SFN, Benine RPC, Bottaro M, Ferreira-Júnior JB. Does exercise-induced muscle damage impair subsequent motor skill learning? Hum Mov Sci. 2019 Oct;67:102504. doi: 10.1016/j.humov.2019.102504. Epub 2019 Jul 27. PMID: 31362262.
  5. Pareja-Blanco F, Alcazar J, SÁnchez-ValdepeÑas J, Cornejo-Daza PJ, Piqueras-Sanchiz F, Mora-Vela R, SÁnchez-Moreno M, Bachero-Mena B, Ortega-Becerra M, Alegre LM. Velocity Loss as a Critical Variable Determining the Adaptations to Strength Training. Med Sci Sports Exerc. 2020 Aug;52(8):1752-1762. doi: 10.1249/MSS.0000000000002295. PMID: 32049887.
  6. Oliver JM, Jagim AR, Sanchez AC, Mardock MA, Kelly KA, Meredith HJ, Smith GL, Greenwood M, Parker JL, Riechman SE, Fluckey JD, Crouse SF, Kreider RB. Greater gains in strength and power with intraset rest intervals in hypertrophic training. J Strength Cond Res. 2013 Nov;27(11):3116-31. doi: 10.1519/JSC.0b013e3182891672. PMID: 23736782.