パワーリフティングのトレーニング頻度について考える

パワーリフティング頻度

トレーニング頻度は、筋肥大のみならずスクワット・ベンチプレス・デッドリフトの技術向上を目指すパワーリフターにとって大きなトピックです。

正直なところ、1つの正解は存在しないと思います。トレーニング歴や身体のサイズ、挙上重量、性別、など要素が多すぎるからです。

とはいえ、無思考に週1や毎日など決める訳にもいきません。

本記事では、パワーリフティングを目的としたトレーニングでのビッグ3の頻度について考えをまとめたいと思います。

筆者

最終的には人それぞれ

筆者について

トレーニング、特にビッグ3が好きなパワーリフティング愛好家。マックスは、ベンチプレス135kg、スクワット215kg、デッドリフト255kg。筋肥大と筋力の最大化を目指して日々精進中。

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ビッグ3の頻度を考えるために

パワーリフティングで強くなるための頻度を考察するにあたって、以下の要素を確認していきたいと思います。

  • 筋力と筋肥大と頻度の関連性の研究
  • 筋肥大に必要なセット数の研究
  • 個人差を考慮する方法
  • トップパワーリフターの実例
  • トップコーチの推奨方法

まず最初に重要なのは現在のトレーニング科学のデータを確認することかなと思います。

パワーリフティングに対する研究ではないかもしれませんが、パワーリフティングはウェイトトレーニングの一種ですので、非常に参考になります。

また、研究である程度的を絞った後は個人差がどのように影響していくかを見ていきます。

そして最後にリフターやコーチから実例や推奨方法を確認していきたいと思います。

結論を簡単に書いておくと、ビッグ3それぞれの頻度は以下で調整するのがいいかと思います。かなり極端なので、次章以降の解説を読むことをオススメします。

  • スクワット:2~6回/週
  • ベンチプレス:2~6回/週
  • デッドリフト:1~3回/週

筋力と筋肥大と頻度に関する研究

最初に、筋肥大や筋力と頻度の関係性についてトレーニング科学界ではどのようなデータがあるのか確認しましょう。

簡単に言ってしまうと、筋肥大に関しても筋力に関してもトレーニング頻度は関係なさそうです。*(1)(2)

しかしあくまでボリュームが同じであれば、という条件下になります。基本的に頻度を増やせばボリュームも増やしやすくなるので、そこは考慮しなければいけません。

頻度が筋肥大や筋力に影響しないとはいえ、「このブロックはベンチプレスを強化する」という目的に合わせて頻度向上≒ボリューム向上させることは可能です。

とはいえ頻度をあげただけでは筋肥大効率があがる訳ではなさそうなので、あまり気にしなくてよさそうです。

参考記事

筋トレ頻度筋トレの頻度は筋肥大に関係ない研究【重要なのはボリューム】

ノルウェーの高頻度トレーニング研究 *(3)

一方で非常に気になる研究が存在しているのも事実です。

ノルウェーのパワーリフター競技者を対象に、週3回と週6回のグループに分けて15週間トレーニングさせた研究があります。

しかもビッグ3のマックスは、スクワットが125kg~205kg、ベンチが85kg~165kg、デッドリフトが155kg~245kgと研究にしてはかなり高い基準です。(16名中3名は女性)

頻度以外の種目やボリューム、強度は全て共通で行っています。

ビッグ3の頻度は確認できなかったのですが、こちらの研究を再現しようとした別の研究では以下のような内訳ですので、参考にしてよいでしょう。*(4)

ノルウェー研究のトレーニングメニュー
引用元: New training frequency study: 3x vs. 6x, Menno Henselmans

週3回のグループはスクワットとベンチプレスは週3、デッドリフトは週1です。週6回のグループはスクワットとベンチプレスが週6回、デッドリフトは週2回の2倍です。

この結果として、スクワットとベンチプレスは週6回グループの方が2倍程伸びています(SQ: 11% vs 5%、BP: 11% vs 6%)。デッドリフトは有意差が無かったようです。

また、大腿四頭筋などの筋肥大を確認した際も、高頻度グループだけが筋肥大し、低頻度グループでは有意な筋肥大は見られなかったとのこと。

これだけ見ると週6回に圧倒的なメリットがあると考えられますが、個人的には以下のような理由からそうでもないかと思っています。

  • 週6回に慣れていないため「新たな刺激」であった可能性
  • あくまで15週間という短期的な期間での結果
  • 研究がパブリッシュされていない

単純に考えて週6回もスクワットすることに慣れている人はいません。本研究の序論にも「一般的に週2回の頻度で行われる」と書かれています。初心者が伸びやすいように、慣れていないからこそ効果が得られたとも考えられます。*(5)

また、長期的に高頻度で続けて怪我をしないか、効果が出続けるかという点に関しては疑問が残ります。少なくとも低頻度の時期を混ぜながらやった方が関節にも筋力向上にもいい気がします。

筋肥大に必要なセット数の研究

ということでノルウェーの研究を除けば、無理矢理頻度を増やしたり減らしたりするメリットは無さそうです。

しかしながら、成長のためには最低限ボリュームが必要ということも事実です。研究から考えて、1週間単位および1日単位の推奨ボリュームは以下のようになります。

  • 1週間あたり1部位10セット以上
  • 1日あたり1部位10セット以内
    ※どちらも部位による差はあります。

上記を踏まえると、頻度を週1に抑えるのはかなり難しい気がします。スクワット10セットなんてやりたくありません。

セット数に関する記事はこちら

週のセット数【最低10セット?】筋肥大に必要な1週間のセット数についての研究と考察 1日のセット数筋トレで1日の最適なセット数は?【やり過ぎは良くない研究結果】

頻度が増えるとボリュームの質が高まる

1日に10セットなど高ボリュームを詰め込むと何が起こるでしょう?単純に挙上重量が疲労によって落ちるだけでなく、フォームも雑になってくるはずです。

パワーリフティングの練習として見た際に、上記2点は本来やりたいことの真逆です。

トレーニングでは扱える限り重い重量を、最大限理想的なフォームで扱うことが目的です。

1回1回の質を向上させたいと考えると、少なくとも1日5セット前後に抑える必要があるのではないでしょうか。

もちろん、上記セット数はビッグ3だけを数えた数字ではないため、単純には考えられませんが、週1回よりも週2回以上に分けた方がメリットはありそうに思えます。

個人差を考慮する方法

今のところ、最低週10セットをこなすためには、週2以上の頻度でトレーニングした方がいいんじゃないかと思えます。

それをベースに、トレーニング歴や挙上重量、性別などの個人差を考慮していきたいと思います。

  • トレーニング歴
  • 挙上重量
  • 身長
  • 性別
  • 年齢
  • 食事(増量 or 減量)

考慮するのは上記4つくらいで良いと思います。基本的にはどれくらいの疲労が残るのか、どれくらい回復力があるのか、という点を頻度に反映させます。

トレーニング歴

トレーニング歴が短い程、少ない刺激で成長することができます。本当にトレーニング初心者であれば週1セットだけでも筋肥大・筋力向上が起こるでしょう。

反対に、トレーニングに対する回復力は低いと考えられます。純粋に身体が適応していないからです。

とはいっても、初心者の場合は適応力が高く、基本的には挙上重量も軽く疲労が大きくないため、あえて頻度を少なくするメリットはないと思います。

もちろん、早く強くなりたい・デカくなりたい、という初心者の場合は、頻度を増やした方がパワーリフティングに必要な動作スキルの習得に繋がると思います。

トレーニング歴が長い場合、より多くの刺激を与えなければいけない可能性が高く、また回復力もそれに応じて伸びています。

過負荷を与えながらも回復するために、週数回にボリュームを分ける必要が出てくるでしょう。

また、世界トップクラス、特に超重量級などの場合は1セッションあたりの疲労が大き過ぎるために、頻度を落とす必要も出てきます。しかしながら一般レベルであれば頻度を落とすことは考えなくていいと思われます。

挙上重量

挙上重量が重くなるほど(筋力が強くなるほど)、身体への刺激は強くなり、疲労も大きくなります。

しかしながら強くなるほど、成長に必要なボリュームも増えます。そのため、トレーニング頻度は増やした方がトレーニングしやすいと思われます。

身長

身長が高いほど、仕事量が大きくなるため(挙上距離が長くなる)、同重量でも低身長の人に比べて疲労が大きくなります。

そのため、低身長の人に比べて、高身長の人の方が低頻度側に寄っていくでしょう。

性別

男性の方が一般的に身長が高く筋力も強いため、疲労度は大きくなります。

女性の場合は1セッションの疲労は小さくなるため、高頻度でも耐えられる(その方が効果的)と考えられます。恐らくテストステロン値も関わってくると思いますが、詳しくはわかりません。(すいません...調べます。)

年齢

当たり前かもしれませんが、若い人の方が回復力は高いためトレーニング頻度を増やしても問題ない場合と考えられます。

逆に高齢者の場合は、トレーニングボリュームとの相談にはなりますが、身体が回復できるように頻度を調節する必要があるでしょう。

食事(増量 or 減量)

増量していた方が身体の回復力が高まるため、高頻度を採用するとしたら増量時がオススメです。

反対に減量時では回復力が落ちますが、頻度を落としてトレーニングボリュームが落ちると筋肉が減りやすくなります。減量だからといって無理矢理頻度を落とす必要はないでしょう。

筋合成シグナルを高頻度で生み出すためにも、減量時に頻度は落とさない方がいいのではないでしょうか。

トップパワーリフターの実例

個人的に好きな2人のトップリフターのビッグ3頻度を紹介します。

この二人を見て分かりますが、超トップレベルのリフターでも高頻度派と低頻度派に分かれます。

ジャマール・ブラウナーの頻度

ジャマール・ブラウナー(Jamal Browner)は、アメリカの110kg級(USPA)の選手です。

公式記録は、スクワット340kg、ベンチプレス215kg、デッドリフト392.5kgと最強です(ノーギア)。そんな彼の頻度は以下の通りです。

  • スクワット:3回/週
  • ベンチプレス:4回/週
  • デッドリフト:2回/週

400kgレベルのデッドリフターでも週2回行えると考えると、自分のレベルで週1で「腰が疲労するから...」なんて言ってられないです。

ユーリ・ベルキンの頻度

ユーリ・ベルキン(Yury Belkin)は、ロシアのリフターで、男性で世界トップのウィルクススコア648.76を所持しています。(2020-01-12時点)

自己ベストは、ニーラップありでスクワット420kg、ベンチプレス240kg、デッドリフト440kgです。

彼はこちらの動画で、以下のような頻度でトレーニングしていると説明しています。

  • スクワット:2回/週
  • ベンチプレス:2回/週
  • デッドリフト:1回/週

動画内で膝の怪我の過去があるとも言っているので低頻度に影響しているかもしれませんが、1回あたりの疲労が大きいため低頻度なのでしょう。

トップコーチの推奨方法

最後にウェイトトレーニグ界でのトップコーチがどのように考えているかを見てみましょう。

グレッグ・ナッコルズ(Greg Nuckols)はStronger By ScienceMASSにてトレーニング科学について啓蒙活動を行っているパワーリフター兼研究家兼コーチです。

マイク・イズラテル(Mike Israetel)はRenaissance Periodizationの一員で、トレーニング科学博士、パワーリフティングやボデイビルディングの競技経験もあります。

グレッグ・ナッコルズの考え *(5)(6)

頻度に関する研究に少し戻ってしまいますが、グレッグ・ナッコルズも過去の研究をレビューしていて、筋力や筋肥大と頻度の関係性に関して以下のように示しています。

※超省略しているので、詳細は元記事(参考文献一覧)にて確認してください。

  • 筋力:少なくとも週4回までなら比例して効果が伸びる
  • 筋肥大:頻度を増やすにつれ効果が伸びる

筋力に関しては、高頻度にすることでトレーニングの質が向上したり、テクニック習得に繋がりやすいことが要因だと考えています。

筋肥大に関しては、トレーニング未経験者であったり、総ボリュームが低かったりした時の方が高頻度の効果が高くなる傾向みたいです。

頻度を調整する際のアドバイスとして、以下のようなことを述べています。

  • 現在の頻度で伸びていれば変えず、停滞した時に増やす
  • 個人差や部位毎の差を考慮する
  • 苦手部位を強化する際に頻度を増やす
  • 頻度を増やす際は現在のボリュームを分割する
  • 筋肥大だけが目的であれば身体の負荷が少ない種目を選んで頻度を増やす

高頻度の方がレビューの結果が良いからといって無理にやらず、自分に適切なレベルに調節するということが重要みたいです。

グレッグ・ナッコルズが推察している「トレーニングの質」や「テクニック習得」という要素が筋力向上に繋がっているという点は、非常に納得できます。

一般的な人であれば数回に分けた方がパワーリフティングの「練習」を出来るため、少なくとも2回はやった方が良さそうです。

マイク・イズラテルは頻度のピリオダイゼーションを推奨

Revive StrongerというYoutubeチャネルの動画にて、以下のような趣旨の意見を述べていました。(筆者まとめ)

  1. 個人差や部位毎の差を考慮して頻度を決める
  2. 数ヶ月に一回は1~2/週の低頻度サイクルで回復させる
  3. その後に2~3/週のサイクルでトレーニングする
  4. その次は2~4/週、3~5/週など増やす
  5. 頻度を増やして疲労が溜まった時に2に戻る

基本的に、高頻度の方がトレーニングの質が向上して筋肥大には効果的になるというスタンスです。

しかしながら、疲労(特に関節など)が溜まって回復が追いつかないため、ボリュームを調節するのと同様に頻度もピリオダイゼーションを取り入れるべきだと考えています。

要は頻度は基本的にボリュームを増やすタイミングや追い込みたいタイミングで上げるべきということです。

マイク・イズラテルのトレーニング理論

彼のトレーニングに対する考えの基礎にMV(筋量維持ボリューム)やMRV(最大回復ボリューム)という概念が存在します。

上記の頻度に関しても、高頻度=MRVに近づけるために行うというイメージです。詳しくは、マイクイズラテルのMEV・MAV・MRVトレーニングボリューム理論にて解説しています。

mike israetel's theoryマイクイズラテルのMEV・MAV・MRVトレーニングボリューム理論

パワーリフティングの頻度:まとめ

長くなりましたが、以上がパワーリフターのトレーニング頻度に関する情報のまとめになります。※まだまだ世の中にはあらゆる情報が存在していますので、頑張って探求します。

簡単にまとめると以下のような感じです。

  • スクワット:2~6回/週
  • ベンチプレス:2~6回/週
  • デッドリフト:1~3回/週

基本的に1種目2回/週はやりたいところですが、デッドリフトは人によって疲労が大きいため、最低1回/週としています。(とはいえ一般人であれば全然2回/週は大丈夫なはずです。)

上記の最低ラインをベースとして始め、停滞したタイミングで頻度を増やすといいでしょう。その際は、ボリュームを増やさずに分割することが重要です。

また、頻度を増やしたら増やしっぱなしではなく、数サイクルに1回程度は、身体を休めるために低頻度を取り入れるようにもしましょう。

ディロードの記事でも紹介しましたが、回復するだけでなく、休むことでその後の成長率が高くなる可能性もあります。

最後に、自分に合った頻度を見つけるということが一番大事です。「憧れの選手がこうしているから」という理由で真似をするのではなく、トレーニングを記録してしっかり結果が出ているのかを確認していきましょう。

読んでいただきありがとうございました!

参考文献

  1. Schoenfeld, Brad & Grgic, Jozo & Krieger, James. (2018). How many times per week should a muscle be trained to maximize muscle hypertrophy? A systematic review and meta-analysis of studies examining the effects of resistance training frequency. Journal of Sports Sciences. 10.1080/02640414.2018.1555906.
  2. Ralston, G.W., Kilgore, L., Wyatt, F.B. et al. Weekly Training Frequency Effects on Strength Gain: A Meta-Analysis. Sports Med - Open 4, 36 (2018) doi:10.1186/s40798-018-0149-9
  3. High Frequency Training for a Bigger Total: Research on highly trained Norwegian powerlifters, FEBRUARY 18, 2014 BY GREG NUCKOLS, Stronger By Science
  4. New training frequency study: 3x vs. 6x, Menno Henselmans
  5. NORWEGIAN HIGH FREQUENCY PROGRAMS
  6. Training Frequency for Strength Development: What the Data Say, JULY 30, 2018 BY GREG NUCKOLS, Stronger By Science
  7. Training Frequency for Muscle Growth: What the Data Say, AUGUST 9, 2018 BY GREG NUCKOLS, Stronget By Science