プラトー打破:バリエーションと忍耐力どちらが必要か?

プラトーを乗り越える

DO YOU NEED TRAINING VARIATION OR PATIENCE TO GET THROUGH THIS PLATEAU?

著者:Nick Shaw, Chad Dolan

執筆日:2018-1-9 (2020-4-27訳)

本記事は、Renaissance Periodizationの許可を得て、英語から翻訳しています。Renaissance Periodizationはコンテストやスポーツ、ボディメイクなどの目的に対して科学的なコーチングをするグループです。※画像の出典元は原文記事になります。

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序論

プラトーを打破するためにはトレーニングバリエーションか、忍耐力かどちらか必要でしょうか?

この質問に応えるためには、運動をより単純なものに分解して考えないといけません。

ストレスサイクル

運動とパフォーマンスを最も単純な要素に縮小させると、2つの考えだけが残ります。

  1. 人間は生理機能を持つ組織や器官を形成する何兆もの細胞の集まりです。
  2. これらの細胞は、ストレスを受け取り反応する受容体に包まれています。

図1において、より「現実的」なものにするにはいくつか要素を足さなければいけませんが、ストレス-適応サイクルを表しています。

プラトー打破解説図
図1. 単純化されたストレス-適応サイクル

※Stress Signals: ストレスのシグナル。Cell Receptors Activate: 細胞受容体が活性化。Cellular "Program" Selection: 細胞のプログラムを選択。Cellular "Program" Execution: 細胞のプログラムを実行。Cellular Changes: 細胞の変化。

ストレス適応

オーストラリアの医師であるハンズ・セリエは、上記(ストレス-適応サイクル)を生理学に根付かせた「汎適応性症候群(GAS:General Adaptation Syndrome)」という概念を生み出しました。

汎適応性症候群は、ホメオスタシスへの脅威であり適応反応を引き起こす、生理学的ストレッサーの反応フェーズをまとめています。(図2)

この「脅威(ストレッサー)」が将来的にネガティブな反応を起こさないようにする、身体の働きです。

プラトー打破解説図
図2. ハンズ・セリエの汎適応性症候群の再描画

※左より、身体がショックを受けた警告期、身体が回復する抵抗期、身体が適応する超回復期(compensation)。点線がホメオスタシス、赤線がストレスを示しています。

しかしながら、身体全体がストレスを受け取るため、望んている通りに適応させるためには、ストレスを特異にかけなければいけません。

特異性の原則(SAID:Specific Adaptations to Imporsed Demands Principle)はこの考えを表すもので、運動適応において重要な原則の1つです。

上図を振り返ると、ストレッサーによってパフォーマンス向上に繋がっていることが分かります。

そのため、新たに向上したホメオスタシス(もしくは基準値)がさらに適応を起こすためには、より大きなストレッサーが必要となります。

漸進性過負荷の原則(Principle of Progressive Overload)はこの考えを表すもので、こちらも運動適応において重要になります。

しかし、こんなに単純なのであれば表題のトピックは出てこないはずです。

本当の疑問は、「適応しない時に何をすればいいのか」です。

プラトー

汎適応性症候群や特異性の原則、漸進性過負荷の原則から期待できるように適応しなかったり、伸びなかったりすることは、トレーニングにおいて必ず起こります。

そう感じる理由は、成長率や伸び幅が期待していたよりも小さいからかもしれません。

一般的に、こうなった場合に最初に考えるのは「オーバートレーニングになっているか」です。

当然オーバートレーニングによる「代償不全」やネガティブな適応は避けたいです。(図3)

そのため、ボリュームや強度、頻度を減らしたり、種目を変えたりすることがあるでしょう。

しかしながら、このような場合は忍耐力、バリエーションどちらが必要なのでしょうか。

プラトー打破解説図
図3. ハンズ・セリエの汎適応性症候群の再描画

オーバートレーニング vs オーバーリーチング

まず初めに、オーバートレーニングを定義しなければいけません。

オーバートレーニングは慢性的な状態であり、2ヶ月以上パフォーマンスが低下したり気分障害があったりします。

オーバートレーニングの原因は「回復不足」が長引くこと以外には比較的知られておらず、オーバートレーニングとオーバーリーチングの区別も一般的にはっきりしていません。

端的に述べると、オーバートレーニングを私たちは以下のように定義します。

長期間パフォーマンスの向上がない、もしくはパフォーマンスの低下とともにトレーニング以外の要素(イラつき、不安、短気、慢性的疲労)にもネガティブな影響が出ている状態。

一方でオーバーリーチングは、以下のように定義しています。

オーバートレーニング症候群にような気分障害やパフォーマンスの一貫とした低下がない、「上下する」期間。

これらを前提に次の質問に移ります。

本当にオーバートレーニングになったことがあるのでしょうか。それともオーバーリーチングして忍耐力が無かっただけでしょうか。

忍耐力 vs バリエーション

注意:オーバートレーニングを推奨している訳でも、オーバートレーニングに気をつけなくていいという訳でもありません。

多くの人は本当のオーバートレーニングを経験しておらず、オーバーリーチング間際で恐怖が勝り、早い段階でトレーニングを調節している、と言いたいです。

私自身パフォーマンス向上のために意図的にオーバーリーチングしたことがありますし、他の人のオーバーリーチングもたくさん見ているので、世間知らずなつもりはありません。

フロリダアトランティック大学の筋肉研究所において私がデータを収集していた際の、「Efficacy of Daily 1RM Training in Well-Trained Powerlifters and Weightlifters: A Case Series」という研究について紹介します。

37日間連続で、トレーニング経験者(経験10年のパワーリフター2名、経験5年のウェイトリフター1名)が、その日の1RMでバックスクワット、その後にボリュームセットを5セット(その日の1RM85%で3レップ、90%で2レップ)行いました。

つまり、およそ120日間、これらのリフターが1RMテストを実施するのを監督してきました。

馬鹿げた手法で、オーバートレーニングになってしまうと思うかもしれません。 しかしながら、その考えは正解でも間違いでもないです。

トレーニング自体は馬鹿げていましたが、同時に効果的でもありました。

開始から終了までで、1RMの筋力は3.1~8.4%伸びています。開始からベストの日で比較すると、5.8~10.8%伸びています。

227kgスクワットできる人だとすると、1ヶ月で5-10%伸びるということは、11-22kgになります。

トレーニング経験が長くなるにつれ成長率が小さくなってくることを考慮すると、驚きの数値です。

この研究の結果が今話しているトピックにどう関係するか、詳しく見ていきましょう。(図4)

データからわかるように、それぞれのリフターは最初にパフォーマンスが低下し、適応するまでに上下しています。

その後、平均パフォーマンスが1日目の1RMを超えます。

ピークに達する時間はそれぞれですが(35~37日目)、パフォーマンスが上下していたにも関わらず、最終的には頂点に達します。

自分がトレーニングでこのようなパフォーマンスの上下を経験したら、オーバートレーニングを疑うかもしれません。

しかしながら、それでは目の前のことしか見えていません。

もちろん、基準値の筋力に戻るまで最初の5~7日間はパフォーマンスが上下しました。

しかし、2週目には初めての適応が現れ、1日目もしくは前週と比較してパフォーマンスが向上しています。

長期的に一貫してパフォーマンスが低下していないため、機能的オーバーリーチングの例と見て良いでしょう。

しかしながら、後からなら何とでも言えますし、先のことはよく見えません。

そのため、オーバートレーニングの可能性が現れた時には依然として注意することを勧めますが、もう少し耐えてみてもいいと思います。

プラトー打破解説図
図4. Zourdosら,2016の引用に汎適応性症候群を追加

オーバーリーチングの指標は?主観的回復度・強度・バーベル挙上速度

前述した1RMの上下動を詳しく考察するために、回復度を管理しパフォーマンスを予測できるように客観的および主観的な手法を用いました。

毎日、主観的回復度評価尺度(Perceived Recovery Status Score Scale)を利用して、主観的回復度を記録しました。

各リフターが研究室に入ると同時に記録し、その後さらにカフェイン摂取後(360mg、いわゆるプレワークアウト)、ウォームアップ後にも記録して、主観的回復度の変化を追っていきました。

また、予備レップ数(RIR: Repetitions In Reserve)に基づいた主観的運動強度(RPE: Rate of Perceived Exertion)と、バーベル挙上速度をウォームアップ最終セット(当日の1RMの85%)に記録しました。

これらの情報はその日の1RMテスト重量を定めるのに使われ、また研究後に分析されました。

カフェイン摂取によって主観的回復度は向上しましたが、必ずしもパフォーマンスを向上させませんでした。

そのため、そのセッションが好調になるかどうかは、プレワークアウトを摂った後の感覚で判断しきれません。

一方で、ウォームアップ最終セットの主観的運動強度の低下(RPEの低下、RIRの向上)は、パフォーマンス向上に繋がっていました。

興味深いことに、バーベル挙上速度とパフォーマンスの関係(3名中1名のみに当てはまった)よりも、主観的運動強度とパフォーマンスの関係(3名共に当てはまった)の方が発生率が高かったです。

つまり、プレワークアウトでテンションがあがったり、ウォームアップ最終セットで「速く」バーを動かせたりといったことよりも、ウォームアップが簡単に感じた時こそが、メインセットのパフォーマンスが好調となる指標ということです。

最後に

注意:毎日1RMを行うのは精神的にも肉体的にも負荷が大きいです。その他の選択肢を考慮した後に、一時的な手段として慎重に行うべきです。

初級・中級リフターは適度なボリューム・強度・頻度であれば、どのようなトレーニング手法でも成長できます。

そのため、毎日1RMテストをするのは、テクニックが固まって精神的にも肉体的にも耐久力のある上級者のみが行うべきで、その際もピーキングのような一時的手段として実施されるべきです。

これらを実践的なものにまとめると、まず最初に忘れてはならないのが、パフォーマンス向上のためのトレーニングは厳しいもので、レベルが上がるにつれてさらに厳しくなるという点です。

パフォーマンスを継続的に向上させるためには、さらにハードなトレーニング手法であったり、抜本的なアプローチが必要になるかもしれません。

本記事で解説した運動適応のために重要な原則を守り、適切に判断・注意していれば、オーバートレーニングのリスクを最小限に抑えながらパフォーマンスを伸ばせるでしょう。

しかしながら、それにはオーバーリーチングが必要になるかもしれません。そのような場合は、以下の要素を考慮してください。

  • 気分と活力を高めるためにカフェインを使用する。疲労している時になんとかジムに行くためには便利ですが、パフォーマンスに繋がるとは限りません。プレワークアウトでテンションが上がったとしても慎重にトレーニングしましょう。
  • 絶好調に感じ、もしそれがプレワークアウトによる感覚でないとしたら、その日はさらにパフォーマンスを上げて追い込めるかもしれません。しかしながら、次のセッションでは疲労が高まるでしょう。
  • RPEのような主観的指標を利用しない、バーベル挙上速度のような客観的指標が向上しても、高レベルなパフォーマンスには繋がらないでしょう。バーに触れる前に成功するかは決まります。「感覚は嘘」と考えるのはハードコアかもしれませんが、適切なアドバイスではありません。慎重に本能に従いましょう。
  • オーバーリーチング期にはパフォーマンスが上下します。普通のことです。しかしながら、数週間パフォーマンス低下が一貫している場合、オーバートレーニングになります。それは普通ではありません。上下していても徐々に良くなっていれば、耐えることで新たな適応に繋がるかもしれません。
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