筋肥大を目的としたトレーニング負荷の増やし方【イズラテルvsヘルムズ】

トレーニング負荷の増やし方

本サイトで何度も参考にさせて頂いている、マイク・イズラテルやエリック・ヘルムズなど、研究者やコーチ達の間で最近議論になっている話題がありました。

そのトピックは、「毎週どのようにトレーニングの負荷を増やしていくのが筋肥大に最適か」というものです。

個人的にも改めてトレーニングの組み方を考えるきっかけになったので、本記事で概要を解説したいと思います。

筆者

何が正解なの

筆者について

トレーニング、特にビッグ3が好きなパワーリフティング愛好家。マックスは、ベンチプレス135kg、スクワット215kg、デッドリフト255kg。筋肥大と筋力の最大化を目指して日々精進中。

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毎週どのように負荷を増やしていくか

筋肥大のためには、毎週ボリュームを増やすのか、強度を高めるのかというトピックに対して、研究者たちが議論をしていました。その流れが以下のような感じです。

  1. 本トピックに関して、マイク・イズラテルらによる論文が公開
  2. エリック・ヘルムズらが上記論文に対してレターでコメント
  3. マイク・イズラテルらがRenaissane Periodization上にて再度コメント

なので、一旦は上記流れに沿う形で要点を説明し、最後に個人的な考察をまとめたいと思います。

念のためもう一度記載しますが、今回のトピックはメゾサイクル(4-8週間などのトレーニングサイクル)において、マイクロサイクル(一般的に1週間)毎にどのように負荷を増やすのが、筋肥大に最適かというものです。

簡単に言うと、毎週何を増やして負荷を高めるの?ということです。メゾサイクル毎の話でも、筋力の話でもないので、お気をつけください。

※マイク・イズラテルらの理論を全般的に知っておきたい方は、事前にをマイクイズラテルのMEV・MAV・MRVトレーニングボリューム理論を読むことをオススメします。

マイクイズラテルらの考え *(1)

既にご存知の方も多いかも知れませんが、簡単にまとめると以下のような感じです。

  • セット数・重量・レップ数の要素の中で、セット数を増やすのが科学的には最も支持されている。
  • セット数だけ増やせばいいという訳ではないが、強度だけ増やすことには懐疑的
  • レップ数が高くなりすぎないように、強度を上げていくのがいいかもしれない
  • MEVからメゾサイクルを始め、MRV前後でサイクルを終え、ディロードを行う

非常にシンプルな話で、セット数の増加を基本として毎週負荷を高めていくというものです。

彼らの主張の中心的な根拠は、以下の通りです。

ボリュームと筋肥大には用量反応関係*を示唆する根拠が増えてきているが、相対的強度に関してはその関係性が示されておらず、重量の役割は明らかではない。

*量を増やせば効果も高まる関係。例えばボリュームを増やすほど、筋肥大の度合いも高まるという意味。

前提として、ボリュームを増やすグループと強度を増やすグループを直接比較した研究がないことから、上記を根拠にしています。

ボリューム・強度と筋肥大の関係性

ボリューム

上記のように、ボリュームは筋肥大と用量反応関係が見られています。

初心者では週0-5セットから10セット以上の幅で、経験者であればさらに高セットでも、「ボリュームが多いほど良い」結果が出ているそうです。

しかしながら、1セッションあたり10セットを超えるのはやり過ぎで、筋肥大に最適ではない可能性があります。

当然ながら上限はあるものの、筋肥大が目的であればボリュームを増やす程、リターンが大きいということになります。

強度

一方で、相対的強度はボリュームほど筋肥大との関係性が明確ではありません。

まず最初に、相対的強度(1RMに対する重量)を高めてもより筋肥大するとは限らない点が挙げられます。

1RMに対して30%未満だとそれ以上の強度よりも筋肥大を起こさないことや、90%以上を数セット行うと筋肥大に必要なボリュームを稼げなくなることはあります。

しかしながら、この間(30%-90%)であれば、筋肥大に対する関係性は明確ではないということです。

どのようにトレーニングを組むべきか

これらの考えを踏まえて、イズラテルらは以下のように実践することを示唆しています。

  1. セット数でカウントして、ボリュームを増やしてくのが良い(セット数 x レップ数 x 重量ではなく)
  2. セット数を増やす妨げになるレベルでは、重量を高めない方がいいと思われる
  3. 簡単に回復できるが筋肥大をいくらか引き起こすボリュームから始め、徐々にセット数を増やす
  4. MRV(回復できる限界のボリューム)に達してパフォーマンスが落ちたらボリュームを落とす
  5. 強度に関しては、5-10レップ、10-20レップ、20-30レップなどいくつかのゾーンでやるといいかもしれない
  6. 強度のプログレッションは、マイクロサイクル(一般的に週)毎か、数マイクロサイクル毎に行うべきか明確ではない

セット数を徐々に増やし、重量を増やすのはあくまでレップ数が極端に落ちたり上がったりしないようにする、というイメージです。

また重量に関しては、様々な重量で行うことで筋繊維タイプ毎に成長を促せる可能性が一部の研究によって示されているため、上記のように幅を持たせています。

本主張のトレーニング参考例

上記を簡単にまとめると、以下のような方針でトレーニングをすることになるようです。※あくまで概念を理解する参考例で、直接使用するプログラムではありません。

  • 筋群あたり10セット/週のボリュームでメゾサイクル(4-8週程度)をスタート
  • 毎週平均2セットずつ、20セットになるまで増やしていく
  • 疲労がたまったら(本例だと20セットの週を終えたら)、ディロード週を設けて疲労を抜く
  • 重量に関しては、毎週1.25kg前後増やして、狙ったレップ幅からずれないようにする。

エリック・ヘルムズらの考え *(2)

上記イズラテルらの記事に対して、3DMJでおなじみエリック・ヘルムズらが、一部の主張に対して指摘を入れています。要点は以下のような感じです。

  • ボリュームの用量反応関係は週毎のボリュームではなく、一定期間のボリュームを比較した研究しかない
  • 漸進性過負荷を、毎週負荷を増やすという前提で考えているが、急性に負荷を増加させる必要性がある訳ではない
  • MRVまでボリュームを増やすのは最適ではないかもしれない
  • 重量を増やしてレップ数を増やすのが最適ではないという点に関して、根拠が欠けている
  • (イズラテルらが推薦する方法は)怪我のリスクが高まる可能性

彼らの立場としては、簡単に言うと「毎週セット数増やすのが最適ではないんじゃない?」という感じです。(まあわざわざコメントしてますからね)

それでは1つずつ内容を少し深堀してみましょう。

ボリュームと筋肥大の関係性

前述した通り、研究で示されているボリュームと筋肥大の用量反応関係は、週毎のボリューム変化を比較したものではなく、一定のトレーニング期間のボリュームを比較したものです。

つまり、「1週目が5セット、2週目は7セットの方がいい」というものではなく、「一定期間中、1週間5セットと10セットを比べると、10セットの方がいい」という感じです。

その中で毎週セット数を増やすべきか、固定のセット数で高ボリュームを達成するか比較した研究はないみたいです。

また、重量と筋肥大の関係性は明らかではないものの、だからといってセット数が優先されるべきとも言えないと主張しています。

漸進性過負荷の法則を誤って応用している

単純に、漸進性過負荷の法則は「毎週負荷を増やすという意味ではない」という主張です。

どれくらいの負荷が「過負荷」になるかは明らかではないですが、急性の刺激(≒前週のセット数)ではなく、以前の適応状態(≒パフォーマンスや身体の発達状態)によって定まると考えられています。

そのため、週毎ではなく、トレーニングで身体が適応するに従って、負荷を高めて「過負荷の最低量」に合わせなければいけないという考えになります。

また、ホーンらの6週間の研究(3)から、トレーニング経験者の場合、急性にボリュームを増やす必要がないかもしれない、とも指摘しています。

本研究では、セット数を週10セットから32セットまで増やした際に、トレーニング1週間前から開始3週間後に関しては細胞外水分を除外した除脂肪体重が有意に増加しているが、3週間後から6週間後にかけては有意な変化がなかったためです。

MRVまでボリュームを増やすのは最適でもないかもしれない

イズラテルらがメゾサイクル内でMRVまでセット数を増やすもモデルを提示していますが、ヘルムズらは「MRVが筋肥大に最適なボリュームと関連づける根拠は存在しない」としています。

反対に、筋肥大に最適なボリュームよりも高いボリュームに適応してしまうこともあり得るとのことです。

最近実施されたシステマティックレビューにおいて、22の研究中10件で、オーバーリーチをさせようとしてもパフォーマンスが減少しなかったものがありました。

パフォーマンスが低下した研究では、1週間のセット数が筋肥大に最適と観察されてきた数値よりも遥かに高かったようです。

つまり、イズラテルらが提示している「パフォーマンスが低下するまでセット数を増やす」という考えは、上記のレビューを基にすると筋肥大に最適ではないことになります。

また、ボリュームと筋肥大の関係性は比例ではなく、ボリュームが高くなるにつれて筋肥大のリターンは小さくなる点も指摘しています。

ショーエンフェルドの研究では、10セット以上/週は、5セット未満/週と比較して+36%の筋肥大をもたらしており、ボリュームを(最低)100%増やしたのに対して筋サイズが36%向上した。

それ以外にも、筋群あたり30セット以上/週の効果を示す研究もあれば、6-18セットがピークでありそれ以上は筋肥大が向上しないという研究もあるみたいです。

レップ数を減らして重量を増やすのは最適ではないのか?

イズラテルらの記事では、「相対的強度を高めると筋肥大に対して疲労が不相応に増える」と書かれていました。

そのため、重量を増やしてレップ数を減らしていく方法は筋肥大に適切ではない(疲労が溜まるため)と考えているのですが、ヘルムズらはその根拠を疑問視しています。

重量が増えると疲労も増えると示している研究は、高重量で限界近くのセットと、低重量で限界近くではないセットを比較してるみたいです。

セット数が同じの場合重量が増えてレップ数が減っても、RIRが同じであれば、最適でないとは言えない、というのがヘルムズらの考えです。(RIR: 本来なら出来たがあえて余らせたレップ数)

また、セット数が同じの場合、重量を増やしてレップ数を減らすピリオダイゼーションの方が除脂肪体重の結果がいい研究もあるとのこと。

怪我のリスクが高まる

ここはあくまで可能性として指摘していますが、怪我のリスクが高まるというものです。

システマティックレビューにおいて、急性-慢性仕事量比率(acute-to-chronic workload ration)が非接触性の怪我と関連していると結論付けられています。

ウェイトトレーニングに関してはデータがないため指標が定まらないものの、イズラテルのMEVからMRVにセット数を増やすモデルは急にセット数が高まるため、リスクが考えられると示しています。

どのようにトレーニングを組むべきか

上記のようにイズラテルらとは考えが異なる中でも、重量を調整するために増やしていくべきという点には賛成のようです。

その方法として「ダブルプログレッション法」が紹介されています。この方法では、身体の成長に合わせて重量を増やしていくことになります。

  1. レップ幅を決めてセットを行う
  2. 身体が適応してレップ幅の上限に達成したら、次のセッションから重量を増やす

また、セット数に関しては以下のような方法を推奨しています。最初からボリュームの増減を決めない点が特徴的です。

  • 過去のトレーニングデータを基にセット数を決める
  • または、筋群あたり8-12セット/週というメタアナリシスからのデータを参考にする
  • その後はパフォーマンスを評価してボリュームを調整する

マイクイズラテルらの反応 *(4)

上記のようなヘルムズらの指摘などに対して、イズラテルらが以下の内容をRenaissance Periodizationの記事で補足しています。

記事内では全部で13点挙げられていましたが、本記事内では個人的に重要だと感じたポイントに絞りたいと思います。

ほとんどのメゾサイクルはMEVから始めるべき

MEVからサイクルを始めるべき理由は主に以下の3点みたいです。

  1. ディロード週からの急激なボリューム上昇を防ぎ、怪我のリスクを抑える
  2. 怪我や疲労蓄積のリスクが最小で筋肥大を起こせる = ローコストで筋肥大できる
  3. 種目を練習できる期間となり、メゾサイクルの生産性をあげる(テクニックと疲労減少)

イズラテルらのメゾサイクルモデルでは、MEV→MRV→ディロード→MEVとなります。

MRVの高ボリュームからディロードを挟むことで身体が回復するだけでなく、ボリュームへの感受性が高まるとされているため、MEVでも十分ということです。

また、確かにMEVのような比較的低セットの週があることでテクニックにも余裕が出てきますね。

回復能力はすぐに成長するため高ボリュームを実施できる

反復効果(Repeated Bout Effect)により、セッション毎に回復力は向上していくみたいです。

ディロード後や久しぶりに行う種目の後は低セットでもダメージが大きいですが、数回したら筋肉痛も出なくなり、次の日から同様のパフォーマンスで実施出来たりします。

この反復効果によって高ボリュームを実施できる状態に身体が適応するため、その分ボリュームを増やそうというのがイズラテルらの考えです。

MAVはMEVよりももっと高い

MAV: 身体の適応が最大になるボリューム

こちらもMEVからスタートする点を支持するためのものです。下記2点をベースとしています。

  • 筋群あたり8セット/セッションが最適な平均ボリュームとわかっている
  • ディロード後にその8セットを行うとダメージが大きく、成長に繋がらない

最適なセッションあたりのボリュームが大体8セットと示される中で、それをいきなり行うとダメージにより逆に筋肥大しなくなってしまうため、MEVからスタートするということです。

上記のようにスタートから中・高ボリュームで始めることによる筋ダメージが原因で、筋肉の成長に繋がらないことは研究からも分かっているようです。

そのため、常にMAV(この場合8セット/セッション)で行うのではなく、MEVからMRVへと増やして、メゾサイクルの平均をMAVに持ってくるという考えです。

どの週がパフォーマンスに好影響を与えたのかは分かりにくい

ボリュームを毎週増やしたくない理由として「どれくらいのボリュームでパフォーマンスが向上したか分からなくなるから」というものが挙げられます。

しかしながら、フィットネスと疲労の関係性から、週毎には筋力の変化を正確に見れず、ディロードの後のみ結果が分かります。

※トレーニングして身体が適応(筋力向上など)しても、疲労が蓄積するためフィットネス(パフォーマンス)がその分向上する訳ではないため。

さらに、高ボリュームと低ボリュームは同程度の筋力向上し、高ボリュームの方が筋肥大した研究がいくつかあるみたいです。

そのため、最も筋力が向上するボリュームを見つけたら、ボリュームを増やしてみても同程度に向上するか試した方がいい、というのがイズラテルの考えです。

その方が筋肥大が向上する可能性があるからです。

なぜ停滞した時にだけボリュームを増やすと考えるのか?

こちらは確かにそうだな、と個人的に思いました。

セット数を増やすことへの反対意見として、「停滞したときにだけボリュームを増やす」という考えがあります。

しかしながら、この考えは停滞理由を最初からボリュームに絞ってしまっています。本来であれば栄養や生活スタイルも関係している可能性があります。

そのため、ボリュームを増やすのではなく減らすのが正解な場合もあるでしょう。

この点からも、セット数を特別視する必要がない(レップ数や重量、RIRは毎週変化させるのが一般的であるため)と述べています。

まとめ

以上がイズラテルら、およびヘルムズらの意見の簡単なサマリーです。

個人的には今までほぼマイク・イズラテルのトレーニングの組み方をベースにしてきたので、良い議論を見られたなと思います。

どっちかと言えばヘルムズらの方が慎重な印象です。そもそものボリュームと筋肥大の関係性や漸進性過負荷の法則の誤った応用について指摘していて、納得感が強かったです。

一方でイズラテルのMEVからMRV、ディロードのモデルも非常に納得がいきます。

しかし、イズラテルらのモデルは「自己達成的(Self-fulfilling)」と言っていました。(確かどこかのポッドキャストでエリック・ヘルムズが発言していました)

つまり、MEV→MRV→ディロードといった大きなボリュームの変化が起きるため、MEVから始めざるを得ないことになり、筋肥大に最適なボリュームにするためにMRVまで増やさざるを得ないということです。

結局のところ、これらの議論は「最適な筋肥大」を求める中での小さな違いだとは思います。

どちらのスタイルも理にかなっており(もちろん違いがあるので議論になっていますが)、どっちのやり方でも間違いなく結果は出るでしょう。

最終的には自分がどっちを心地よく出来るか、継続出来るか、結果が出るのか、というところだと思います。ヘルムズらの意見でも述べられていましたが、個人差の領域です。

ぜひ皆さんもこれを機にトレーニングプログラムを見直してみてください。

読んでいただきありがとうございました! (もう少し投稿出来るように頑張ります...!)

ボリュームに関する記事はこちら

セット数筋トレのセット数を科学的に考察【1日・1週間あたりのボリューム】 筋トレ頻度筋トレの頻度は筋肥大に関係ない研究【重要なのはボリューム】

参考文献

  1. Israetel, Mike PhD1; Feather, Jared MS1; Faleiro, Tiago V.1; Juneau, Carl-Etienne PhD2 Mesocycle Progression in Hypertrophy: Volume Versus Intensity, Strength and Conditioning Journal: October 2020 - Volume 42 - Issue 5 - p 2-6 doi: 10.1519/SSC.0000000000000518
  2. Minor, Brian MS, CSCS1; Helms, Eric PhD, CSCS2; Schepis, Jacob3 RE: Mesocycle Progression in Hypertrophy: Volume Versus Intensity, Strength and Conditioning Journal: October 2020 - Volume 42 - Issue 5 - p 121-124 doi: 10.1519/SSC.0000000000000581
  3. Haun CT, Vann CG, Mobley CB, et al. Effects of Graded Whey Supplementation During Extreme-Volume Resistance Training. Front Nutr. 2018;5:84. Published 2018 Sep 11. doi:10.3389/fnut.2018.00084
  4. IN DEFENSE OF SET INCREASES WITHIN THE HYPERTROPHY MESOCYCLE, by Dr. Mike Israetel, Chief Sport Scientist / Jared Feather, MS, IPE & NFF PRO / Dr. James Hoffmann / Anshuman Radhakrishnan - Renaissance Periodization